犯罪者または犯罪を犯すおそれのある危険な性格の持主を社会から隔離し、彼らの性格を矯正し、職業教育を施すなどの保護・矯正の処分をいいます。
犯罪を無くすのには、ただ刑罰を科し、厳罰化するだけでは不充分であるところから考えられました。
しかし、現在では、以下の場合にのみ保安処分に類似の制度が行なわれているに過ぎません。
①犯罪少年、触法少年→ 虞犯ぐはん少年などに対し、家庭裁判所が少年鑑別所の鑑別の結果などに基づき保護処分に付すことを相当と認めた場合には、その少年を保護観察に付したり、あるいは自動自立支援施設や少年院に送致し、これらの施設で矯正教育を行います (少年法)。
②売春防止法違反で執行猶予となった婦女を婦人補導員で保護・矯正します。
③執行猶予の判決を受けたものに対し、保護観察所が指導監督を行ない、就業の援助、職業の補導・医療や宿所の世話などを行います(更生保護法)。
④刑務所から釈放後6ヵ月以内に限り、更に犯罪を犯す危険を防止するため帰住の斡旋、環境の改善などを行います (更生保護法)。
⑤精神病者、精神障がい者などで、入院させなければ自身を傷つけ、また他人に害を及ぼすおそれのあるときは、本人・関係者の同意がなくても一定の精神病院に入院させることができます (精神保健及び精神障がい者副詞に関する法律)。
改正刑法草案は、精神障がいによる犯罪者に対する 「治療処分」 、アルコール中毒等に起因する犯罪者に対する 「禁絶処分」 という二種類の保安処分を認めていますが、これに対しては、精神障がい者等に対する差別であること、法務省の 「保安施設」 の下では、本当の「治療」が行なわれることはあり得ないこと、等を理由に、現在でも反対論が根強いです。