認知とは、婚姻外でもうけた子を自分の子であると認める意思表示をいいます。
我が国の民法は、母からする認知についても合わせて規定していますが、母子関係は出生の事実によって当然生じ、母がする認知は通常考えられません。
捨て子をした後に、これは自分の子だと名乗りをあげるような場合が考えられるとする
学者もいますが、それは母子関係の確認行為で、嫡出子を捨て子にした後母子の名乗りをあげた場合とは異なるところがありません。
従来の判例は上記の条文を盾にして婚外子の母もまた父と同じく認知を要し、出生届の提出に認知の意思があるものとしていましたが、今日では婚外母子関係は原則として子の出生によって生ずるという見解に改めるに至っています。
婚外子の父が認知しようとしない場合であっても、子の側から裁判所に対し認知の訴えを起こすことができます(婚外子の父が死亡した後3ヶ年を経過したときは、この訴え出は容認されません)。
父の自発的な認知を任意認知といい、認知を求める訴えによる認知を裁判認知といいます。
いずれの場合による認知であっても、子の出生の日にさかのぼって非嫡出父子関係が発生します。
親族関係の発生等は厳格主義によって担保されなければなりませんから任意認知は市区町村長に対する届出をもって行なうことを要するとし(裁判認知は判決が厳格性を担保します。認知は遺言によっても行なうことができます。)、認知は、自然血縁の存在を前提としますので、任意認知がなされた場合でも、認知を受けた子その他の利害関係人はこれを争うことができるものとされています。
親子の関係は性行為による直接的な血のつながりの関係で、認知はこのことと直結する事柄でありますから法定代理による認知はあり得ず、認知とは何かを識別する能力(意思能力)があれば制限行為能力者でも単独で行なうことができます。
祖父による孫の認知ということも、認容されません(認知をしていない子が死亡し、その直系卑属があるときは死亡した子でもこれを認知することができるという規定もこれに関連します)。
市民社会法は市民個々人のあくなき意思尊重とその現実化を核とし、単なる事実に法的効力を付与するについては意思に一歩を近づけて運用されなければならないとする法理を確立していますので、直接的な自然血縁の存在をもって法的親子とするについても、この法理を貫徹して法規制をしています。
成年の子を認知するについてはその承諾を必要とし、胎児を認知するについてはその母の承諾を得なければならないとし、父母による監護が著しく困難若しくは不適当の場合、実親子関係を断絶させて特別養子関係を新設させるようなことです。
妻が不義の子を生んだ場合でも、否認の訴えを起こすことが義務付けられたものとはなっておらず、出訴期間の徒過によって嫡出子として確定してしまうようなときもその法的展開となります。
反面、ひとたび行なった認知の意思的取消しは、認容されません。
非嫡出子は母の氏を称し、認知があっても当然には父の氏に変更されません。
家庭裁判所の許可を受け市区町村長に届け出ることによって父の氏を名乗ることができます。