連鎖販売取引(マルチ商法)に関する法律相談
友人や知人から「いい儲け話がある」「いいバイトがある」などと誘われてセミナーや説明会に連れて行かれた場合は連鎖販売取引の可能性があります。
いわゆるマルチ商法やネットワークビジネスと呼ばれるものです。
鎖販売取引の際、消費者(無店舗個人)が契約をした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しの方が後である場合には、その日)から数えて20日間以内であれば、消費者は連鎖販売業を行う者に対して、書面により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
なお、平成16年11月11日以降の契約については、連鎖販売業を行う者が、事実と違うことを言ったり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、
上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをできます。
なお、この場合、業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払いを請求できず、商品の引取り費用も業者の負担となります。
ただし、原状回復義務については、契約を解除する双方が負うことになります。
業者は支払われた代金、取引料を返還するとともに、消費者は引渡しを受けた商品を業者に返還しなければなりません。
それでは、連鎖販売取引の要件を解説します。
連鎖販売取引(マルチ商法)とは?
連鎖販売取引は一般的にマルチ商法と呼ばれ、マルチ商法とはマルチレベル・マーケティングシステム(多段階販売方式)の略称の事です。
最近ではネットワークビジネスとも呼ばれています。
特定商取引に関する法律では、このマルチ商法を連鎖販売取引と定義して規制しています。
「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。)の
販売(その斡旋を含む。)又は有償で行う役務の提供(その斡旋を含む。)の
事業であつて、販売の目的物たる物品(以下「商品」という。)
の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。)
受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。)
若しくは販売の斡旋をする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をする
ことをいう。)
若しくはその役務の提供の斡旋をする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは
販売の斡旋をする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供の斡旋を
する他の者が提供する取引料その他の経済産業省令で定める要件に
該当する利益の全部又は一部をいう。)を
収受し得ることをもつて誘引し、
その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。)を
伴うその商品の販売若しくはその斡旋又は同種役務の提供若しくは
その役務の提供の斡旋に係る取引(その取引条件の変更を含む。
以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。
定義の要件
1.物品(施設利用・役務提供を受ける権利を含む)の販売(その斡旋を含む)または
有償で行う役務提供(その斡旋を含む)の事業で
2.再販売、受託販売もしくは販売の斡旋をするもの、または同種役務の提供もしくは
その斡旋をする者を
3.特定利益を収受し得ることをもって誘引し
4.特定負担を伴う商品の販売もしくはその斡旋、または役務の提供もしくは
その斡旋に係る取引をすること
となり、業者が相手方とマージンなどの特定利益が得られると勧誘し、加盟金などの特定負担を
伴う、商品の販売・役務提供やその斡旋の取引をすること、となります。
1の要件物品とは?
ここでの物品とは有体物としての動産を指し、不動産は含まれません。
指定制はとられていないので、アクセサリー、鍋、印鑑、洗剤、健康食品、自動車用品などなど、すべてのものが対象となります。
施設を利用しまたは役務の提供を受ける権利とは?
施設を利用したり、サービスを受けるための権利のことです。
施設はビルや建物などの建築物に限られず、ゴルフ場や公園なども対象となります。
斡旋とは?
斡旋とは販売の相手方をみつけて、販売の仲立ちをすることです。
事業とは?
事業であるためには反復継続して行うこと、またはその意思が必要です。
2の要件再販売とは?
再販売とは商品を買い受けて他の者に販売することをいいます。
自分ですべてを消費する場合は単なる消費者になりますが、再販売するつもりで購入し、結果的に自己消費した場合は再販売する者に該当します。
受託販売とは?
受託販売とは販売の委託を受けて商品を販売することをいいます。
取次ぎや代理などの如何を問わず、商品の所有者等から販売の委託を受けて行う販売はすべて受託販売となります。
同種役務の提供とは?
同種役務の提供とは、その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいいます。
種類とは一般人がいかなる役務なのかを認識できる程度のもので良く、絵画のレンタル、ダンスのレッスン、観賞用植物のレンタルなどが、これにあたります。
このレベルにおいて、有償で行う役務の事業を行う者が提供する役務と同一の役務の提供するものであれば、同種役務の提供をする者に該当します。
3の要件の特定利益とは?
この特定利益を33条は「その商品の再販売、受託販売若しくは販売の斡旋をする他の者又は
同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料
その他の経済産業省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう」と定めています。
(1) 商品の再販売、受託販売若しくは販売の斡旋をする他の者又は同種役務の提供若しくは
役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料により生ずるものであること。
(2) 商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者に対する商品の販売又は
同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者に対する役務の提供により
生ずるものであること。
(3) 商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者が取引料の提供若しくは
商品の購入を行う場合又は同種役務の提供若しくは役務の提供の斡旋をする他の者が
取引料の提供若しくは役務の対価の支払を行う場合に当該他の者以外の者が
提供する金品により生ずるものであること。
例
(1)は組織の他の加盟者(またはこれから加盟しようとする者)が提供する加盟金、保証金などの
取引料から生じる利益のことです。
例えば「あなたが勧誘して組織に加入する人の取引料の10%があなたのものになる」と勧誘した場合がこれに該当します。
尚、取引料とは組織への加入、または組織内での昇進にあたって負わせる経済的負担をいいます。加盟料、保証金、入会金、リクルート料、設備費などなど名義の如何に関わらず取引料になります。
(2)は組織の他の加盟者(またはこれから加盟しようとする者)に対する商品販売や役務の提供に
より生じる利益のことです。
例えば「あなたが勧誘して組織に加入する人が購入する商品の代金(提供を受ける役務の対価)の10%があなたのものになる」といって勧誘する場合がこれに該当します。
(3)は組織の他の加盟者(またはこれから加盟しようとする者)が取引料または代金を
支払う場合に、その加盟者以外の者が提供する金品により生じる利益のことです。
例えば「あなたが勧誘して組織に加入する人があれば統括者(一連の連鎖販売業を実質的に統括する者)から1万円がもらえる」といって勧誘する場合がこれに該当します。
4の要件である特定負担を伴う商品の販売もしくはその斡旋、または役務の提供もしくは
その斡旋に係る取引をすることです。
ここで重要なポイントは特定負担です。
33条1項はこの特定負担をその商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいうと定義しています。
要するに特定負担とは連鎖販売取引をするために伴う負担のことです。
再販売等をはじめる際または販売条件、特定利益等の取引条件を変更する際に、商品の購入、役務の対価の支払い、取引料の提供のいずれであるかを問わず、その取引に伴う金銭的負担は特定負担となります。
この特定負担をともなう商品の販売・斡旋や、役務の提供・斡旋の取引であることが4の要件です。
今日のちょこ
ちょこも夏バテ気味です。