後見には、民法における法定後見と任意後見契約における任意後見とがあり、民法上の後見は未成年後見と成年後見の2つを含みます。
民法上の後見はいずれも要保護性を有する者に対する身辺監護と行為的監護とを内容とし、要保護者と保護を与えるべき者との関係は地縁的存立基盤において制度が立てられています(現実には、要保護者と親族関係にある者がまず保護の与え手とされることが多いです)。
未成年後見と成年後見とでは補完すべき要保護性の内容を互いに異にします。
未成年後見は未成年者に親権者を欠くときに開始され、当該未成年者に対して最後に親権を行なうものは遺言で後見人を指定することができ(指定後見人)、遺言による後見人の指定がないときは未成年被後見人の親族等の請求によって家庭裁判所が未成年後見人を選任します(選任後見人)。
未成年後見人の保護付対象は親権の場合と同じで監護・教育、財産管理・法定代理・法律行為の同意です。
未成年後見人の数は一人に限られ全責任を持って未成年被後見人の保護に当たらせられ、この未成年後見人を監督すべき者として、未成年者に対し最後に親権を行なうものは未成年後見人の指定とともに遺言で未成年後見監督人を指定することができ、この未成年後見監督人の指定がないときも未成年被後見人の親族等の請求により家庭裁判所が未成年後見監督人を選任することができます。
未成年後見人が、未成年被後見人に対し監護・教育を行なうについて親権を行なう者が定めた教育の方法や居所を変更したり、営業を許可しその許可を取り消したり制限したりするについては未成年後見監督人があるときはその同意を得なければならないものとされており、また後見人が被後見人に代わって営業や借財・保証・新築・改築その他13条1項に掲げる重要な行為をするとき等も同様の定めとなっています。
未成年後見人に指定、選任された者は正当な事由がなければ任務を辞することができず、反面不正な行為等をした場合には、家庭裁判所に対する親族等の請求、家庭裁判所自らの職権で解任されます。
成年後見は、後見開始の審判があったときに開始されます。
未成年後見におけるがごとき指定による後見人はなく、すべて家庭裁判所の選任によります。
成年後見人の職務内容は成年被後見人の療養監護、生活全般にわたる配慮、財産の管理・法定代理等です。
成年後見人は複数人となることもあります。
成年後見人の辞任・解任、成年後見人となるについての欠格事由、任意機関としての成年後見監督人の選任等については未成年後見の場合と同じです。
後見人と被後見人の利益相反となるべき行為は、未成年後見・成年後見とも認められず、特別代理人の選任を求めることを要することは親権者とその親権に服する子との間における利益相反行為の禁止と同じですが、後見監督人があるときは、後見監督人が特別代理人の選任に代えてその役割を果たします。
未成年後見・成年後見の場合とも後見人は、その就職後遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し所定の期間内に財産目録を作成する等の事務を行なわなければならず、また被後見人の生活等のため毎年費やすべき金額の予定を立てる等のこともしなければなりません。
後見人は任意機関としての後見監督人の監督に服するほか、家庭裁判所の監督に服します。
後見人の職務執行は、要保護性補完の最優先且つ無条件性に基づく無償の奉仕でありますが、被後見人の資力その他の事情により家庭裁判所はある程度の報酬を被後見人の財産の中から後見人に付与することができるものとされています(後見人の側から報酬を請求する権利はありません)。
後見に服する未成年者が成年に達し、または後見開始の審判が取り消されたとき等後見が終了したときは、2ヵ月以内に管理の計算をし、その管理した財産の引渡しをしなければなりません。
親権者の場合とは違い、後見人には収益権は与えられておらず、またその財産管理について善良な管理者の注意義務が要求され、後見人が被後見人に返還すべき金額には後見の計算が終了したときから利息を付けなければならない等、要保護性補完に関わらない事項については財産法の原理を貫徹せしめる正しい法規整となっています。