SSブログ

留置権 [ら行]

留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するときに、その債権の弁済を受けるまでその物を留置しうる権利です。

例えば、留置権によって、時計を修理した者は時計の修理代金を支払うまでその時計を渡さないと主張できます。

このような留置権は、公平の観点から認められた法定担保物権です。

もっとも留置権は物権ではあるものの、占有を伴う限りにおいて認められ、留置権者が占有を失えば留置権は消滅します(302条)。

なお民法上の留置権と商法上の留置権はその沿革を異にするものであり、商法では商人間の信頼関係を尊重して広く留置権の成立を認めています。

留置権には付従性、随伴性、不可分性が認められますが、留置権はその物の占有継続が存続要件であり、その物が滅失したり処分されたような場合には留置権がそもそも消滅することとなるため、物上代位性はありません。

また、民法上の同様の制度として同時履行の抗弁権がありますが、通説によれば、留置権と同時履行の抗弁権が両方成立する場合には、いずれも自由に行使することができます。


留置権の成立

他人の物判例・通説によればここでいう他人とは、占有者以外の者を言い、債務者の所有物である必要はありません。もっとも、これには反対する見解も主張されています。

物は、動産・不動産を問わず、不動産の場合にはその登記を要しません。

占有留置権の成立には、その物の占有が必要です。これは成立要件にとどまらず、存続要件となっています。

代理人による占有でもよいとされています。物と債権との牽連性その具体的な基準については、多様な見解が主張されていますが、一般的に

占有する物と債権との間には何らかの関連性がなければなりません。

295条1項は留置権について「その物に関して生じた債権を有するときは」と定めており、これには、債権がその物自体から生じた場合。

債権が弁済期にあること留置権行使の前提として、債権が行使しうる状態にあることが必要(295条1項但書)。


留置権について、以上のような成立要件が充たされる場合であっても、295条2項により、その占有が不法行為によって始まった場合には、留置権は成立しません。

そこで、例えば盗んだものについて必要費などの費用を支出したとしても、それによる留置権の主張は認められません。

また、判例では、占有開始後に占有が不法となり、かつ占有者がそのことにつき悪意の場合には、295条2項を類推適用して留置権の成立を認めません(最判昭和41年3月3日民集20巻3号386頁など)。


留置権の効力

留置権には、留置的効力が認められます。
これは、債務の弁済を受けるまでその物を留置することができるという効力であり、これによって債務の弁済を間接的に強制する効果があると考えられます。

そして、留置権は物権であり、この効力を誰に対しても主張することができます(この点が同時履行の抗弁権と大きく異なります)。

これに対し、留置権に優先弁済的効力は認められていません。留置権者は目的物を競売にかけることができます(民事執行法195条)が、これはあくまで形式的競売、すなわち目的物を留置し続けることによる費用などの不利益を回避するためのものであり、優先弁済を目的とするものではありません。

物の引渡しを求めて訴えを提起した場合に、相手方が留置権を主張して認められれば、引換給付判決が下されることとなります。

例えば、被告は原告の代金100万円の支払いと引き換えに甲を引き渡せ、といったものです。



留置権者の権利義務

留置権者は、被担保債権の全額の支払いを受けるまで、目的物を留置できます(296条、不可分性)。また、留置物から生じた果実を収取し、これを自己の債権の弁済に充当することができます(297条1項)。

一方で、留置者は目的物の保管について善管注意義務を負い(298条1項)、また債務者の承諾を得なければ留置物の使用や賃貸、担保としての提供をすることはできません(298条2項本文)。

ただし留置物の保存に必要な行為については、債務者の承諾は不要です(298条2項但書)。



費用償還請求権

留置権者が、その留置物につき必要費・有益費を支出した場合その償還を求めることができます。

必要費について、一般の善意占有者の場合(196条1項但書)と異なり、留置権者は常に必要費の償還を請求できます。この償還請求権を被担保債権として、その物に留置権が認められます。

有益費については、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択によりその支出した金額または価値の増加額の償還を請求することができます。

ただし、有益費については、裁判所は請求により、その償還に相当の期限を許与できます。

この場合には履行期が到来していないこととなるため、これを被担保債権とする留置権の成立は認められません。


留置権の消滅

留置権は、物権一般の消滅原因である、混同や目的物の滅失など、担保物権の一般的な消滅原因である、被担保債務の弁済による消滅などによって消滅するほか、目的物の占有の喪失(302条)や、留置権の消滅請求(298条3項)、代担保の供与(301条)によって消滅します。

298条3項は、留置権者がその義務に反した場合に、債務者が留置権の消滅を請求することができると定めており、これが留置権の消滅請求です。

この請求権は、債務者だけでなく所有者にも認められており、またこれは形成権であって、消滅請求がなされれば留置権者の承諾などを必要とせず、留置権は消滅します。

また、301条は、債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができると定めており、このように被担保債権の代わりの担保となりうるものを供与して、留置権の消滅請求をすることもできます。

これには留置権者の承諾が必要であり、留置権者が承諾しない場合には、承諾に代わる判決を求めることとなります。代わりとなる相当の担保には、物的担保に限られず人的担保も含まれます。

占有の継続に関して、占有が奪われた場合には、占有回収の訴え(200条)によって占有を回復すれば、占有は継続していたものと扱われるので(203条但書)、留置権も消滅しません。
タグ:留置権
nice!(0)  コメント(0) 

離婚と戸籍 [ら行]

夫婦が離婚すると、筆頭者でない妻が夫婦の戸籍から除籍されます。
除籍された妻は、前の戸籍に戻る(復籍する)か、自分自身を筆頭者とした新しい戸籍を作るかのどちらかになります。

結婚前の戸籍に戻っても、新たに戸籍を作っても、いずれの場合でも、結婚により氏(姓)を変えた妻は離婚により旧姓に戻ります(「復氏」といいます)。
ただし、離婚から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に出すことで、離婚後も婚姻時の夫婦の姓を使うことができます。

夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚する際には、父母の一方を親権者と定めます。このとき、夫婦の戸籍の筆頭者ではない妻が親権者となった場合でも、離婚により戸籍から抜けるのは妻のみです。つまり、子どもは親権者ではない父の戸籍に入ったままなのです。

この場合で、親権者である母の戸籍に子が入るようにするためには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をし、その許可審判書謄本を付けて市区町村役場へ入籍届をします。
この入籍届が受理されることで、子は父親の戸籍から除籍され、母親の戸籍に入ります。

なお、母と子が同じ戸籍になるためには、離婚の際し夫婦の戸籍から除籍される際、自分自身を筆頭者とした新しい戸籍を作るようにします。結婚前の戸籍に戻ってしまった状態では、子が同じ戸籍に入ることはできません。同じ戸籍に入れるのは、一組の夫婦と、その夫婦の子のみだからです。

nice!(0)  コメント(0) 

離婚によって除籍した場合の取り扱い [ら行]

夫婦が離婚すると、筆頭者でない者が夫婦の戸籍から除籍されます。
除籍された者は、前の戸籍に戻る(復籍する)か、自分自身を筆頭者とした新しい戸籍を作るかのどちらかになります。

結婚前の戸籍に戻っても、新たに戸籍を作っても、いずれの場合でも、結婚により氏(姓)を変えた、者は離婚により旧姓に戻ります(「復氏」といいます)。
ただし、離婚から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に出すことで、離婚後も婚姻時の夫婦の姓を使うことができます。

夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚する際には、父母の一方を親権者と定めます。このとき、夫婦の戸籍の筆頭者ではない妻が親権者となった場合でも、離婚により戸籍から抜けるのは妻のみです。つまり、子どもは親権者ではない父の戸籍に入ったままなのです。

この場合で、親権者である母の戸籍に子が入るようにするためには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をし、その許可審判書謄本を付けて市区町村役場へ入籍届をします。
この入籍届が受理されることで、子は父親の戸籍から除籍され、母親の戸籍に入ります。

なお、母と子が同じ戸籍になるためには、離婚の際し夫婦の戸籍から除籍される際、自分自身を筆頭者とした新しい戸籍を作るようにします。結婚前の戸籍に戻ってしまった状態では、子が同じ戸籍に入ることはできません。同じ戸籍に入れるのは、一組の夫婦と、その夫婦の子のみだからです。
nice!(0)  コメント(0) 

同一人物が取締役を兼務する会社間の取引 [ら行]

同一人物が取締役を兼務する会社間の取引

 会社と取締役個人の取引だけでなく、法人間の取引であっても、以下のような場合には規制(会社の承認)の対象となります。

A社(甲氏が代表取締役)とB社(甲氏が代表取締役)
   この場合、A社・B社両者で規制(承認)の対象となります。

A社(甲氏が代表取締役)とB社(甲氏が取締役)
   この場合、B社において規制(承認)の対象となります。

A社(甲氏が代表取締役)とB社(甲氏が100%株主)
   この場合、A社において規制(承認)の対象となります。

A社(甲氏が平取締役)とB社(甲氏が平取締役)
   この場合、A社B社いずれにおいても規制(承認)の対象とはなりません。

nice!(0)  コメント(0) 

リボルビング方式 [ら行]

リボルビング方式とは、複数の取引を一体として,一定の返済額または一定の割合の金額を毎月返済する方式。

リボルビング方式は,元金もしくは元金と金利の合計額の一定額を毎月返済する「定額方式」,元金もしくは元金と金利の合計額の一定割合を毎月返済する「定率方式」,毎月の借金残高に応じて返済定額もしくは返済割合を変更していく「残高スライド方式」に区分される。
nice!(0)  コメント(0) 

利益相反取引の承認決議 [ら行]

利益相反取引の承認決議

利益相反取引については、会社法356条1項2号、3号において、直接取引と間接取引という二つの類型が規定されています。


直接取引
(会社法356条1項2号)
取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとするとき

間接取引
(会社法356条1項3号)
株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき


取締役がその地位を利用し、会社利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図ることを防止するため、利益相反取引を行う場合には、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)において、その取引について重要な事実を開示して、その承認を受けなければなりません(会社法356条1項柱書、365条1項)。

さらに、取締役会設置会社においては、利益相反取引をした取締役は、その取引後、遅滞なく、その取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法365条2項)。

nice!(1)  コメント(0) 

離婚協議書 [ら行]

                    離婚協議書

〇〇(以下、「甲」という)と△△(以下、「乙」という)は離婚について以下のとおり合意した。

                     記

第1条 甲と乙は協議離婚することに合意し、離婚届に各自署名押印する。

第2条 甲乙間の未成年の子××(平成○年○月○日生、以下、「丙」という。)の親権者を甲と定める。 乙は子××の監護権者となり、成年に達するまでこれを引き取り養育する。

第3条 甲は乙に対し、丙の養育費として平成○年○月から丙が成年に達する日の属する月まで、毎月○万円ずつ、毎月末日限り丙名義の口座に振り込み送金して支払う。
上養育費は、物価の変動その他事情の変更に応じて甲乙協議のうえ増減できるものとする。

第4条 乙が、丙の病気のため特別に出費したときは、甲は乙の請求により、その費用を直ちに支払う。

第5条 甲は乙に対し、離婚による慰謝料として、金 万円を平成○年○月○日までに支払う。

第6条 甲は乙に対し、離婚による財産分与として、金 万円を平成○年○月○日までに支払う。

第7条 甲は乙に対し、離婚による財産分与として、その所有に属する下記不動産を譲渡し、平成○年○月○日までに、乙のために所有権移転登記手続きをする。

不動産の表示
(省略)

第8条 甲、乙は、本契約に定めた以外には相手方に対して何らの請求をしないことを相互に確約した。

上記のとおり合意したので、本書2通作成し、甲乙各自署名押印の上各自1通ずつ所有する。

平成○年○月○日

甲            印

乙            印
nice!(0)  コメント(0) 

領収書に印紙が必要とされる場合 [ら行]

印紙税の納付
契約書、領収書等の課税文書を作成したときは、記載された金額に応じた印紙税を納めなけれならないとされています。

例えば、領収書の場合、記載金額が5万円以上の場合は、印紙の貼付が印紙税法によって定められています。

以前は記載金額が「3万以上」でしたが印紙税法の改正ありました。
平成26年4月1日以降に作成されるものについては「5万円以上」と改正されています。

印紙税は、作成した領収書に収入印紙を貼り、消印することにより納付したとされます。

印紙税の納付義務者
印紙税の納税義務者は、課税対象となる領収書を作成した人(法人・個人)とされています。

個人で営業を目的としない場合、例えば、個人が自宅を売却する場合など営業目的と言えない領収書には、収入印紙は不要です。

理事 [ら行]

理事とは、法人の義務を執行する必須常置の機関。

法人は理事によって行為をします。

理事が法人代表者として法人の目的の範囲内で行為すればそれが法人の行為となります。

目的の範囲内とは定款にそれとはっきり書いてなくても、その目的と実現するに相当な行為でありさえすれば、手形の振出などはもとより、寄附や慰労金の支出などさえこれに入ると解されます。

代表者の代表権は制限できますが、これを知らないで取引した人に対してその主張を許されません。

代表者が外形上職務行為とみられるものによって他人に損害を加えれば法人自身の不法行為となり、法人が代表者と並んで損害賠償の責任を負います。

なお、代表者が法人と利害相反する行為をするときは、裁判所に申し立てて特別代理人を選んでもらい、その特別代理人と取引しなければなりません。

流質 [ら行]

流質とは、債務者が弁済期に履行しないときに債務者が質物の所有権を取得するか、あるいは、債権者が質物を勝手に売却してその売買代金を優先的に債権の弁済に充てることをいいます。


かつてはこれが質物から優先弁済を受ける普通の方法でしたが、これを無条件に許容すると、債権者がわずかな債権のために故意に高価な質物を奪ってしまうことになりかねないため、我が国の民法では、質権設定契約またはその後、弁済期前の別の契約で流質契約を結ぶことを禁止し(流質契約の禁止)、そのような契約は、たとえ締結されても無効であるとしています。

しかし、一応そのような心配がいらないと考えられる商事関係と小額の金融を目的とする営業質屋については、流質契約は有効とされています。

なお、禁止されるのは弁済期間前の流質契約のみで、弁済期以後は、当事者間で任意で質物を処分するための契約を結ぶことができます。
Copyright © 法律相談 ちょこじぃ~の法律相談日誌 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます
日払いバイト