正規の証拠調べの時期まで待っていたのでは、その証拠方法の使用が困難な場合に、あらかじめ証拠調べをする手続のことです。
訴訟で原告または被告が自分に有利な事実を主張しても、相手方がその事実について争えば証拠によって証明する必要があるし、また、相手方が、裁判上の自白をすれば、証明の必要はありません。
そのどちらであるかは、相手方の態度によって決まるが、訴えの提起前にはそれは不明であるし、訴えの提起後も直ちにはわかりません。
ところが、訴えを提起する前に証拠固めをしておかないと訴訟で証拠を利用できないおそれのある場合、例えば重要な証人となる人が高齢でいつ死亡するかもしれないような場合であるとか、相手方や第三者の持っている帳簿やその他の文書が、訴訟になってからでは、おそらく隠したりまたは滅失してしまうおそれがあって、それを利用することが困難になったり不可能になるおそれがある場合には、あらかじめ証拠を確保しておくことが必要です。
このように、その証拠の確保を図ることを証拠保全という。
そこで必要のある場合には、訴えを提起する前でも、後でも裁判所にその申立てをすることができます。
申立てをする裁判所は、訴え提起前であれば尋問を受ける者または文書を持っている者の居所または検証物の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所です。
訴えの提起後はその証拠を使用する審級の裁判所であるが、急を要するときは訴え提起前と同じ裁判所に申し立てることができます。
訴訟提起後であっても、最初の口頭弁論期日が指定されたり、弁論準備手続に付された後、口頭弁論終結までになされる証拠保全の申立ては、受訴裁判所にしなければなりません。
この場合に、裁判所は、受命裁判官に証拠調べをさせることができます。
というのも、いずれにしろ、証拠保全の手続で尋問した証人を、当事者が口頭弁論において尋問の申出をしたときには、裁判所は、その尋問をしなければならないからです。
また、裁判所は、訴訟の係属中に職権でも証拠保全の決定をすることがでます。
なお平成15年の改正で、訴えの提起前における証拠収集の手続が新設されました。
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