刑事訴訟手続において、検察官や被告人に対し、裁判所が積極的な役割を果たす建前を職権主義といいます。
職権主義は当事者主義に対立します。
職権主義か当事者主義かの対立は、主として、証拠を集め証拠調べをする役割は、これを裁判所自身が負うあるいは検察官および被告人らの当事者が負うかというところに端的に現れてはいるが、必ずしもこの段階だけに限られるものではありません。
まず第一に、裁判所自身が訴訟を開始するかどうかというところにもみられます。
検察官のごとき裁判所以外の第三者の訴えをまって訴訟を開始する建前を弾劾主義といい、裁判所自身が職権で訴訟を開始する主義を糺問主義といいます。
あるいは、裁判所は検察官が起訴状に掲げた事実が証明できたかどうかを裁判すれば足りるか(当事者主義)、起訴状の事実は裁判の手がかかりとなるだけであってそれ以上に裁判所は事件の真相を探し出さなくてはならないものか(職権主義)、最後に、裁判の過程に、訴訟法に違反した点があっても当事者が異議を申し立てなければそのまま看過してもよいと考えるか(当事者主義)というところに問題があります。
現行法では、以上のいずれの意味においても、職権主義の影は薄いです。
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