取締役の責任の軽減
代表訴訟を起こしやすくなったため、代表訴訟が増加するとともに、取締役の責任の限度額がなく、個人の支払能力や報酬から大きく乖離した高額の請求および判決が行われるようになったため、経営が萎縮し、取締役が積極的な職務執行を行えなくなるといった弊害も発生してきました。
この弊害を解消すべく、平成13年の旧商法改正で取締役の責任を軽減する規定が設けられました。すなわち、任務懈怠に関する取締役の会社に対する責任は、善意にして重過失がない場合に
限り、一定の手続により軽減できることとなりました。
1.最低責任限度額
各取締役が負うべき最低責任限度額は、退職慰労金を含む職務執行の対価(使用人兼務分を含む)の2年から6年分とストックオプション行使による利益の合計額で、以下のA、Bの合計額として計算されます。
A 以下のイ、ロの合計額に、aからcに掲げる区分に応じた数を乗じた額
イ 取締役がその在職中に報酬、賞与その他の職務執行の対価(執行役または使用人を兼務して
いる場合、その執行役または使用人の報酬、賞与その他の職務執行の対価を含む)として会社 から受け、または受けるべき財産上の利益(下記ロを除く)の額の事業年度(注)ごとの合計 額(その事業年度の期間が1年でない場合は、1年当たりの額に換算した額)のうち最も高い
額
(注 )a 取締役の会社に対する責任免除の株主総会決議を行った場合は、その株主総会の決議の
日を含む事業年度およびその前の事業年度
b 取締役会決議などによって責任免除する定款の定めに基づいて責任を免除する旨の 同意を行った場合は、その同意のあった日を含む事業年度およびその前の事業年度
c 責任限定契約を締結した場合は、責任の原因となる事実が生じた日(2以上の日が ある場合は、最も遅い日)を含む事業年度およびその前の事業年度
ロ i をiiで除した額
i 取締役が会社から受けた退職慰労金、執行役または使用人を兼務していた場合、執行役として の退職慰労金または使用人としての退職手当のうち兼務の期間の相当額、財産上の利益の額の
合計額
ii 取締役がその職に就いていた年数と次に掲げる数のいずれか多い数
a 代表取締役または代表執行役
b 代表取締役以外の取締役または代表執行役以外の執行役
c 社外取締役または会計参与
B 取締役が会社の新株予約権を有利な条件で引き受けた場合における財産上の利益に相当する 額であり、以下のイまたはロの額となる。
イ 取締役が就任後に新株予約権(職務執行の対価として会社から受けたものを除く)を
行使した場合
新株予約権の行使時における時価から新株予約権の行使に際して出資される財産の価額および 払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額)を控除した額
ロ 取締役が就任後に新株予約権を譲渡した場合
譲渡価額から払込金額を控除した額
2.手続
取締役の責任を軽減するには、次の3とおりの手続があります。
イ 取締役の責任が生じた後に株主総会の特別決議で減額する方法
ロ あらかじめ定款の定めに基づいて、取締役会決議により減額する方法
ハ 社外取締役について、あらかじめ定款の定めに基づいて社外取締役との契約で減額する方法
〈イの手続について〉
事後的に株主総会において、次の事項を開示し、特別決議を得る方法です。
(イ) 責任の原因となる事項および賠償責任額
(ロ) 免除を受けられる限度額およびその算定根拠
(ハ) 責任を免除すべき理由および免除額
〈ロの手続について〉
あらかじめ定款で一定の場合に取締役の責任を取締役会決議をもって軽減できる旨を定めて おく方法です
〈ハの手続について〉
会社は定款で社外取締役と責任を軽減する契約を締結できる旨および責任の限度額を規定し、
社外取締役と賠償責任を限定する旨の契約を締結することができます。
この場合責任の限度額は、予め定款で定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額です。
今日のじじ
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