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民事裁判の管轄 [か行]






民事裁判の管轄に関する法律相談です。
民事裁判の管轄は、事件の種類によって変わります。

管轄権

民事訴訟において、管轄とは特定の事件について、どの裁判所が裁判権を行使するかという分担の定めのことをいいます。

また、民事訴訟においては、国際裁判管轄・職分管轄・審級管轄・事物管轄・土地管轄のすべてが揃った裁判所が、事件を管轄します。

職分管轄、審級管轄、事物管轄、土地管轄については法律で定められていますが、土地管轄については一定の場合に合意管轄や応訴管轄も認められています。


このように管轄にもいろいろ種類がありますが、ここでは、合意管轄について解説します。

合意管轄には、「専属的合意管轄」、と「非専属的合意管轄(付加的合意)」の2種類があります。

専属的合意管轄とは、そこでしか第1審の裁判が認められない管轄のことをいいます。
非専属的合意管轄とは、民事訴訟法で決まっている裁判所に加えて、合意した裁判所でも第1審の裁判ができるようにした管轄のことです。

ほとんどの場合、前者の専属的合意管轄を規定しています。
というのも、後者の非専属的合意管轄の場合は、裁判所を特定したことにならないので、どちらにとって有利となるとは限らないからです。

このような理由から、専属的合意管轄裁判所を規定する契約書の文章には、必ず、「専属的合意管轄裁判所」の文字を入れるようにします。
この、「専属的」という文字が抜けていたがために、「専属的」とみなされず、「非専属的」とみなされた判例もあります。


なお、合意管轄の特約は、「一定の法律関係にもとづく訴え」に関してしなければ効力を生じません。ですから、合意管轄の特約には、「本契約にもとづく当事者間の紛争に関しては・・・」のように、「本契約にもとづく」という言葉を入れます(民事訴訟法第11条第2項)。

また、合意管轄の特約は、「書面でしなければ」効力を生じません。


契約書文例1
第 条(専属的合意管轄)
甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。


契約書文例2
第 条(専属的合意管轄)
甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、甲の住所地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。


ここまでの説明は多分解りづらいと思うので、具体例で説明します。

例えば、東京在住の当事者と大阪在住の当事者が契約を締結する場合に、東京の裁判所を合意管轄裁判所と定めたときは、大阪在住の当事者にとっては極めて不利な状況といえます。

なぜなら、東京在住の当事者から裁判を起こされた場合、大阪在住の当事者は、東京まで出廷しなければなりません。
これは、交通費や、弁護士などの日当などのコストがかさむことになります。

これでは、仮に勝訴したとしても、費用倒れになる可能性もあります。
当事者が裁判を起こそうとしても、上記のようにコストがかさむので、たとえ勝訴の可能性が高くても、訴訟を断念せざるを得ない、ということにもなりかねません。


このように、契約当事者間の距離が極めて離れている場合、どちらかの当事者に一方的に有利な管轄を決めてしまうと、その当事者にとって訴訟経済上、極めて有利な状況になってしまいます。

ですから、合意管轄裁判所の特約は、訴訟のコストを抑えるために、できるだけ自分側に近い場所の裁判所とするようにします。

私は、不利な条件の代理人をしたことがありましたが、コスト面を考えて、勝てる裁判を和解にしたことがあります。
これは、和解だと、控訴もなく、裁判の回数が少なくすむため、コストより和解金が高くなるからです。ただ、依頼人の理解がないとできないのが難点でした。

こういうのを言うのは気が引けますが、もし、契約時点で有利な側にいる場合は、自分に有利な管轄を合意管轄にしましょう。


以下、他の管轄を簡単に説明します。

職分管轄
取り扱う事務について定める管轄のこと。
訴訟する事件の内容によって、裁判所は変わる。
例えば、訴訟事件を処理する権限と民事執行事件を処理する権限は別々の職分権である。


事物管轄
事件の性質の違いに基づいて定められる管轄のこと。
訴額(訴訟物の価額)が140万円以下の場合(不動産に関する訴訟を除く)は簡易裁判所、それ以上の場合は地方裁判所が第一審の裁判権を有する(例外的に高等裁判所が第一審の裁判権を担当する場合もある)。


土地管轄
事件について、どの土地の裁判所が担当するかの定めをいう。
事件と管轄区域の関連(裁判籍)の有無により定まる。
普通裁判籍 - 民事訴訟の原則的な裁判籍(土地管轄)のことで、被告の生活の本拠地に認められる(民事訴訟法4条)。


任意管轄
法定管轄のうち、当事者の利益を図る目的で定められたもので、当事者の意思で変更することも差し支えない管轄をいう。反対は専属管轄。


合意管轄 - 当事者が同意により認めた、法定管轄とは異なる土地管轄のこと。


応訴管轄 - 原告の訴えの提起が管轄権のない裁判所になされた場合に、被告が応訴することで認められる管轄。
移送 - 裁判により、訴訟係属している事件を、他の裁判所に訴訟係属させることをいう。


専属管轄法定管轄のうち、公益的要請から裁判権が特定の裁判所に専属し、当事者の意思により変更することのできない管轄をいう。反対は任意管轄。
専属管轄の例 会社法835条、民事執行法19条

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