地役権とは自己の土地(要役地)の「便益」のために他人の土地(承役地)を利用する物権である(280条)。
ここにいう「便益」とは要役地の利用価値を増大させるものでなければならないが,引水,排水,各種の導管設置など,種類・内容は問わない。
そして,歴史的にも今日の社会状況からみても最も重要なものが,通行利益をその内容とする通行地役権である。
土地上に他人のために通路が開設され,又は特定人が回帰的に土地上を通行している場合,通行が土地所有者の好意に依存するものか(権利性を有しない好意通行),それとも権利の裏付けがあるのかは個別具体的に判断するほかない。
後者だとした場合,その権利が賃借権・使用借権・地役権・囲繞地通行権のいずれを根拠とするのかが問題となる。
そして,土地が袋地又は準袋地である場合,囲繞地通行権が少なくとも認められ,そうでない場合には通行目的だけに賃借権・使用借権を設定することは稀であろうから,原則として地役権の黙示的設定があったものとされる。
この通行地役権は物権であるので,不動産登記法上も登記の対象とされており(同法1条4号),登記がなされれば「第三者」(民法177条)に対抗することが可能となる。
しかし,現実問題として,通行の合意がなされていても明示的に地役権の設定契約がなされることは少なく,登記にまで至ることは稀である。
また,これまでの裁判例においても通行地役権の登記請求はきわめて少なく,その確認または妨害排除請求にとどまっていた。
これは,地役権の登記請求を行うと「かえって通行権の確認や妨害排除が認められにくいという思惑が原告にはたらくかもしれない」ことにもよると考えられる。
このような実態を背景に通行地役権のほとんどが未登記であり,通行地役権は「第三者」,とりわけ承役地取得者に対する対抗力はない。
このような結果は,通行地役権の意義をきわめて乏しいものとしている。
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