取締役と会社との関係は、委任であるから、委任の規定に従い、取締役は善良なる管理者の注意義務を負う。昭和25年改正商法は、取締役の権限増加にかんがみ、更に忠実義務の規定を置きます。
この二つの義務の相違については学説の分かれるところであるが、多数説は、忠実義務規定は善管義務を宣言的・注意的に更に明らかにした規定とみています。
上の義務は、取締役の一般的義務を定めたものであるが、会社法は更に、具体的な義務として、①競業避止義務、および②会社との間の取引に関して承認を受ける義務とを定めている。
前者は、会社の事業の部類に属する取引を、取締役会(取締役会を設置していない会社では株主総会)の承認なくして自己または第三者のためになすことを禁止するものです。
また後者は、取締役が自己または第三者のために、会社と取引することは、取引条件などで会社に不利益をもたらすおそれがあるので取締役会(取締役会を設置していない会社では株主総会)の承認を得なければならないとしたものです。
また取締役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちにそれを監査役(監査役設置会社では監査役会、監査役を設置していない会社では株主)に報告しなければならない。監査役の業務監査権を、実効あるものとするために取締役に課せられた義務です。
このほか取締役等は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、その事項について必要な説明をしなければなりません。
ただし、その事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでありません。
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