文書偽造罪とは、他人の作成名義を偽る文書・図画または内容の偽りの文書・図画を作る罪です。
文書に対する公共の信用が保護法益です。
広い意味の文書偽造は、狭い意味の文書偽造 (他人名義を悪用する有形偽造) と虚偽文書の作成 (無形偽造) とに分類されます。
通説・判例によれば、我が国の刑法は、取引の安全のためには、責任の所在に偽りのないことが、最も重要であるという観点から、有形偽造を中心にして文書偽造を処罰し、無形偽造を罰するのは特に重要な場合に限っています。
なお、広い意味で有形偽造というときには 「変造」 も含まれます。
「変造」 とは、他人名義の文書に権限なしに変更を加えることです。
あたらしく他人の名義の文書を作るのではない点で、偽造と区別されます。
狭い意味の文書偽造罪には、詔書しょうしょ偽造罪、公文書偽造罪、私文書偽造罪があります。
文書とは、文字またはこれに代わる符号で多少継続的に思想を表示したものであり、その内容が権利・義務その他事実の証明に役立つものをいいます。
図画とがは、その他の形象をもって表示したものです。
郵便局の日付印・印鑑紙・支払伝票なども文書に当たります。
刑は、一般に公文書偽造が私文書偽造より重く、また、それぞれについて、印章・署名を使った場合が使われない場合よりも重いです。
文書偽造罪は、どれも、使うつもりですることが要件になっています (目的犯)。
使うつもりがなく、例えば、悪ふざけで他人名義の文書を使っても罪には問われません。
虚偽文書作成罪には、虚偽公文書作成罪、公正証書原本等不実記載罪、虚偽診断書作成罪があります。
ただし、特別法には、虚偽記載を罰するものが少なくありません。
これらの偽造 (虚偽) 文書を行使すると、それぞれの偽造罪、虚偽文書作成罪と同じ刑に処せられ、しかも未遂も処罰されます。
文書を偽造し、これを行使すれば、虚偽罪と行使罪との牽連けんれん犯となります。
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