取締役の責任に関する法律相談を受けました。
取締役には会社に対する責任と、第三者に対する賠償責任があります。
今日は、会社に対する賠償責任を紹介します。
会社に対する賠償責任
会社と取締役は委任関係にあり、一般的な善管注意および忠実義務を負っていますので、
この2つの義務に違反し会社に損害を与えた場合には、債務不履行の一般原則により、
会社に対しその損害を賠償しなければなりません(民415)。
しかし、取締役の地位が強化されてきており、この一般原則だけでは十分とは言えません。
外国においても取締役の責任を加重する傾向にあるなか、わが国においても取締役の
権限の濫用防止のため、次の個別の責任を取締役に課したものです。
なお、取締役は会社に対して連帯して賠償する責任があります(会430)。
会社法では、取締役の責任を生じさせた行為が取締役会決議に基づくものである場合に、
その決議に賛成した取締役も当該行為を行ったものとみなすという
旧商法の規定は削除され、賛成という判断について
十分な善管注 意義務を尽くしたかという点から
責任が問われることになりました。
責任の種類 賠償責任の金額
1 違法配当の議案の提出 違法配当された金額
2 株主権の行使に関する利益供与 供与した利益の額
3 利益相反取引 会社が被った損害額
4 任務懈怠責任 任務懈怠によって生じた損害額
1 違法配当の議案の提出
違法な剰余金の配当がなされた場合には、会社または債権者は違法配当金を受領した株主に
対して返還請求することができます。しかし、多数の株主に返還請求の訴訟を
提起することは訴訟手続や費用の点からも実際上困難であり、結局会社は
違法配当に相当する損失を受けることになります。
そこで、取締役に連帯責任を負わせ、会社の資本維持を図ろうとするものです。
違法な剰余金の配当に関する職務を行った業務執行取締役または執行役および所定の
議案提案取締役または執行役は、会社に対して交付した金銭等の帳簿価額に
相当する金額の賠償責任を負います。
2 株主権の行使に関する利益供与
昭和56年改正の旧商法は、総会屋の撲滅を目的として、会社は、誰に対してでも、
株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与することを
禁止する規定を設けました。
したがって、これに違反して財産上の供与がなされたときには、その供与を受けたものは
会社にこれを返還しなければなりませんが、実際上その実現は容易ではありません。
そこで、この返還義務について、当該財産上の利益供与をした取締役及びそれが
取締役会の決議に基づいて行われた場合は、決議に賛成した取締役及び
議案を提案した取締役に対して連帯して弁済する
共同責任を認めたものです。
当該利益を供与した取締役は無過失責任ですが、それ以外の関与した取締役は
その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、
責任を負いません。
3利益相反取引
取締役が会社法356条1項2号の規定を遵守し取締役会の承認を得て自己取引した場合の規定です。
たとえ取締役会の承認を得て自己取引したとしても、結果的に取締役の責任不履行などにより
会社が損害を被ることがあります。このような場合には、その取引をした取締役のみならず、
当該取引を承認した取締役に対しても連帯してその損害を賠償する責任を負わせたものです。
4 任務懈怠責任
旧商法の下では、委員会設置会社以外の会社について法令・定款違反行為に係る責任が
規定されていましたが、会社法では、機関設計にかかわらず任務懈怠責任として
整理されました。これは、取締役は会社と委任関係にあるため、
善管注意義務・忠実義務を負っていますが、その任務を
怠ったことにより会社に損害を与えた場合に
責任を負うものです。
この場合、他の取締役も損害賠償責任を負うときには、連帯責任となります。
今日の じじ
珍しく、カメラに近寄ってきました。
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