通行地役権を設定するためには、原則として、要役地と承役地の双方の所有者の間の合意が必要になります。この合意には、文書による明示的な合意が望ましいのですが、口頭の合意でも可能であり、また、土地取得の経緯や長年の通行状況等の特別な事情から黙示的な合意が認められる場合もあります。
また、通行地役権も(用益)物権ですので、本件のケースのように時効によって取得できる場合もあります。
通行地役権を時効取得するためには、要役地の所有者が自己のためにする意思(通行地役権に基づく通行をする意思)をもって、平穏(暴力や強迫によらず)かつ公然(隠蔽せずに)に承役地を通行し、通行の開始当時に通行地役権の存在について、善意・無過失の場合には10年間、悪意の場合には20年間、「継続的」に、かつ、外形上認識することができる状態で通行する場合に限り、時効取得が認められています(民法283条、163条、162条)。
しかも、この「継続的」に行使するとの要素には、要役地の所有者が自ら承役地に通路を開設したことが必要と考えられています(最高裁平成6年12月16日判決)。
これは、通行地役権は、通行の時に限られて使用される断続的で不継続な使用形態にすぎないため、時効取得という強力な権限が認められるためには、通路の開設という恒久的な形態での使用開始という要件が必要と考えられているからです。
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