手形行為がいくつかある場合、ある手形行為が無効だったり取り消されたりしても、ほかの署名者は独立に手形債務を負う、という原則です。
手形行為の署名が形式的には整っていても、署名者が意思能力を欠いていたり、制限行為能力を理由に手形行為を取り消したり、他人によって偽造されたものであったり、実在しない名称の署名だったり、代理人として署名している人に代理権がなかったり、絶対的強迫を受けていた署名だったり、手形に署名するとは思わずに署名してしまったりした場合は、原則として署名者は手形行為の無効または取消しを理由にだれに対しても手形責任を負いません。
しかし、手形行為が有効か、無効かは、先行する手形行為が有効か、無効かに関係なく、個別的に決められるものです。
例えば、甲が乙に約束手形を振り出し、乙→丙→丁(所持人)と裏書譲渡された場合に、乙の裏書が偽造だったり、制限行為能力で取り消されたりしても、丙の裏書がそのために無効となることはなく、丙は担保責任を負います。
しかし、丙および丁が悪意または重過失ある取得者であることを立証すれば、乙は丁に手形の返還を求めることができ、丁は独立の原則を理由に丙に対して遡求することはできません。
一方、丁が善意の場合は、乙に手形を変換することを要せず、甲に対しても、また、丙に対しても請求できます。
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