手形・小切手としては要件が欠けているが、外見上空白部分の補充が予定されているものです。
未完成のまま振り出した場合に限らず、振出しに先立って要件の欠けた手形に引受や裏書、保証の署名だけしたものも白地手形です。
手形要件が1つでも欠けていれば、形式的に無効であって、手形として通用しないのが原則であるから、「補充が予定されているかどうか」が、白地手形であるかどうかの決め手となります。
主観説(通説・判例)は、たとえ一片の紙片であっても、補充権を与える意思で交付されていれば白地手形であるとし、客観説は、発行者の意思とは無関係に、外観から手形として利用されることが予定されているとみられる証券は白地手形として取り扱うべきであり、また、そのような範囲で白地手形を認めれば足りるとしています。
判例には、主観説をとりながら、手形用紙を用いて空欄を残している場合は、補充権授与の意思を推定したり、自分の意思で流通においた以上は補充権授与の意思がなくとも表見責任を負うとするものが多いです。
更に、折衷的な見解は、手形用紙に手形署名のある場合は、当然白地手形とし、記載欄がなかったり、単なる紙片に署名のある場合は、補充権授与の意思が認められるものだけが白地手形だとしています。
白地手形は、流通する道具としては手形と同じであって、裏書または交付(受取人白地の場合)で譲渡でき、善意取得や抗弁制限の保護があり、紛失すれば除権判決もできます。
ただ、手形で請求したり、遡求権を保全するために呈示したりするには、白地を補充しなければなりません。
補充によって、はじめて完全な手形となるし、たとえ、振出人と受取人の間の合意(例えば100万円しか補充できないという約束)に違反して(例えば200万円)補充されても、この不当な補充の事実を知らずに、重過失なく、手形を取得した第三者は、補充されたとおり(200万円)の請求ができます。
特に、受取人白地や確定日払手形の振出日白地の場合は、補充の範囲についての合意は意味を持たず、最終所持人による補充は善意・悪意を問わず、常に正当な補充となります。
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