民法は、詐欺・強迫による意思表示を瑕疵ある意思表示と呼び、意思の不存在と区別し、前者を取り消し得るものとし、後者を原則として無効としています。
その背景には、詐欺・強迫の場合は、意思が欠けているわけではなく、選択の幅(自由)が狭くなっているからだという考え方があります。
しかし、こうした思想は、次第に説得力を失い、次のように修正を余儀なくされつつあります。
詐欺・強迫による意思表示が取り消し得る理由は、意思の不自由だけでなく、アンフェアな手段のゆえに表意者が不利益を受けかねない(不公平な契約内容)からです。
意思無能力や錯誤が無効となる理由も、意思の不存在だけではなく、かかる表意者は不利益を受けかねないからであり、したがって、無効を主張し得るのは、取消しの場合と同様、意思無能力者なり錯誤による表意者、その代理人または承継人に限定すべきです。
これは無効の取消化であり、瑕疵ある意思表示と意思の不存在の融合化にほかならず、判例も要素の錯誤を瑕疵ある意思表示と呼ぶようになっています。
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