市民社会法の下にあっては、男性であるか女性であるかによって法的差別をすることは許されません(両性の本質的平等)。
この原則に一見背反的に両性間に異質な法的効力の付与を許す規定群があるのは、男女間に存する自然的差異の解消のためか、若しくは封建遺制としてです。
封建遺制によるものは、直ちに廃止されるべきものであり、ここでの論外となります。
婚姻は男女という性の異質に着目して特殊に法的効力を付与する法制度の最たるものであり、特定の男女間に相互的な要保護性補完義務を必要とすることを究極の目的とします。
この制度に各国はそれぞれの伝統的な国家目的からする要請を国家政策的に介在させ、婚姻制度を複雑多岐なものにしています(婚姻統制法。婚姻による多児出産者を母性英雄として勲章を授与する立法例も存在します。また婚姻届出、国政調査的事項を合わせてさせる日本法もこれに連なります)。
婚姻は男女間における恒久的で独占的な性提供関係となります。
市民社会法は市民一人ひとりの飽くなき意思尊重とその法的実現を使命とし、異性の性に対する男性・女性それぞれの極限欲望の法的実現は、意思の合致による相互に独占的で且つ恒久的な性提供関係である一夫一婦制として具体化させない訳にはいきません(愛情には独占性を持たせることができない本質があり、婚姻存立の究極の法的基礎を愛情の独占性に求めることはできません。夫婦はお互いに最愛の人であることが願わしいのですが、独占的な愛情の対象であることはできません)。
このようなものとしての婚姻は、夫婦間に諸他の異性関係から分かつ究極のものとして貞操義務を課し、相互的な要保護性補完の義務を負わせつつ(期待権としての扶助義務です。その現実の発生は、常に一方的です。夫が妻を扶養するか、妻が夫を扶養するかであり、夫婦が互いに扶養し合うということはあり得ません)、その他の点においては夫婦は互いに独立の個人で他人間におけるのと法的効力を異にしません。
夫婦には保護義務が強要され、それは夫婦の一方が要保護状態に陥ったときに他方配偶者の意思に関係なく課されるものでありますから、夫婦関係の成立は、何人の目にも鮮やかなものとして確定されていなければなりません。
婚姻の成立には市区町村長に対する婚姻届の提出を要し、厳格な受理条件が定められているのはここにあるのです。
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