検察官が、刑事裁判によって訴追しようとする犯罪事実のことで、単に事件ともいいます。
現在の当事者主義訴訟の下では裁判官に対して判断をしてもらうために、訴因というものによって公訴事実を表すことになっています。
逆にいえば、公訴事実とは、訴因という形式で主張されている犯罪事実です(訴因との関係については「訴因」の項参照)。
ところで訴訟の対象は審理の進行につれてだんだん明らかになるとともに、また変わりもします。その際、変わったからといって常に訴訟をやり直すことは実際的ではないので、どの程度までを同一事件とみるか、という問題が、公訴事実の同一性です。
同一とは事実を横の関係でみて一個であること(単一性-幅の問題)と、縦の関係でみて一個であること(狭義の同一性-ずれの問題)の両者を含みます。
そしてこの範囲内で訴因などの変更が許され、またこれを基準として二重起訴や同時起訴の場合の処理がなされ、既判力の範囲も決定されます。
実際には、同一性の基準は困難な問題で、説も分かれます。
一は基本的事実同一性説といい、両事実を比べて、基本的な部分さえ同一であればよいとし、他は罪質同一説といって、単に裸の事実を比較ではなく、犯罪構成要件で規制もされた事実を比較すべきであるとし、いま一つは訴因同一説といって、端的に前の訴因と後の訴因を比べようとします。
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