民法第162条 所有権の取得時効
1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
解説
本項における「平穏に」とは、「占有者がその占有を取得し、又は、保持するについて、暴行・強迫の行為を用いていない占有」をいいます(最高裁判決昭和41年4月15日)。
また、単に不法の占有であることで平穏の要件を欠くものではないとされます(大審院判決大正5年11月28日)。
本項における「公然」とは、占有者が占有する物を隠匿しないことをいいます。
本項における「占有」とは、「自己のためにする意思をもって物を所持すること」をいいます。
民法第162条第2項の解説
本項における「善意」は、自己の物であると信じること(大審院判決大正8年10月13日、最高裁判決昭和43年12月24日)です。
これに対し、自己の物であると信じていないことを「悪意」といいます。
本項における「過失がなかった」とは、善意であること=自己の物であると信じることにつき、過失がない=無過失であることをいいます(最高裁判決昭和43年12月24日)。
善意については推定されますが、無過失については推定されません(第186条第1項)。
このため、無過失であることについては、取得時効を主張する者が立証責任を負います(最高裁判決昭和45年11月11日)。
今日のちょこ
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